兎▶ 気候と作物 ①
- 2016/02/10
- 02:17
地産地消が最も望ましい農作物のあり方だとすれば、それを乗り越えて入ってくる「よそ者」は好まれざる者なのか。そんなことを考えながら、スペイン産のオレンジやギリシャ産のアボカドを眺めています。食料品売り場には一年中トマトもきゅうりも並び、「旬の味覚」というセンスが薄らいでいく中、温暖化がこのまま進めば、転じて大根や白菜が冷房ハウス栽培されるようになるのでしょうね。最近の榎戸農園の様子はいかがですか。...
師匠▶ 気候と作物 ②
- 2016/02/11
- 06:56
地球温暖化と関係あるのかどうか小生には分からないが、今シーズンの暖冬には泣かされている。作物に異変続出なのだ。やっぱり冬は寒くなければいけない。まず干し柿。例年と同じ時期につるしたのに、カビが生えてしまった。我が家では洗い落として食ったが、いつものように歳暮代わりに使うわけにはいかなかった。村の長老の家では全部捨ててしまったそうだ。もったいない。地元紙も、大量に廃棄した農家の嘆きを報じていた。白菜...
兎▸▸ 気候と作物 ③
- 2016/02/23
- 03:54
こちらフランクフルトの実店舗では柑橘類のカビと、トマトの腐敗に困っています。ヨーロッパも暖冬で、スペイン、イタリアといった地域で【とてもよく実った上質の果物と野菜】は、水分が多く、甘く、大変おいしいのですが、それ自体の重みで非常に傷みやすいのです。防カビ剤を散布していないと、これほどまでに生えるものなのだという見本のようなみかんやオレンジ。閉店時には黒ずんでしまう完熟トマト。そうした面も価格に含ま...
師匠▶▶ 気候と作物 ④
- 2016/02/29
- 20:52
温暖化とは直接関係ないけれど、兎さ吉の話で思い出した。山形に勤務していた時、親しくしていた農家でこんなことがあった。この農家は山形名産の青菜(せいさい)を使った「おみ漬け」を手作りして細々と販売していたが、ある時、1人の女性から怒りの電話があった。おみ漬けにカビが生えたというのだ。彼が問いただすと、女性がカビに気づいたのは、開封後、かなり経ってからだったそうだ。「当たり前でしょう、無添加なんだから...
兎▶ BIO屋の苦しみ ①
- 2016/09/24
- 20:54
このところ、更新が滞っていたのは、自分がプロデュースしたオーガニックの店が、現在、岐路に立たされているからです。結論から言うと、生鮮食料品の扱いをやめるか否かの決断を迫られています。ドイツではオーガニック=BIOが一般的になり過ぎていて、質さえ問わなければディスカウント系の大型チェーン店でも安価に買うことができます。また、日本で例えるならセブン&アイ・ホールディングスや、イオングループに匹敵するREWE...
師匠▶ BIO屋の苦しみ ②
- 2016/09/27
- 04:01
兎さ吉の苦しみ、小生にも少しは分かる。というのも、つい最近、ささやかな実体験があったからだ。東京で時々飲みに行く店の経営者と常連客が、店に併設したギャラリーで「榎戸さんのマルシェ」と銘打ったイベントを企画した。小生も店の景気づけと無農薬農業のPRになれば、と面白がって協力した。もちろん初めての試みだ。当日は味噌や米のほか、畑で取れたカボチャ、イモ、ネギ、ピーマンなどの生鮮野菜を並べた。評判は悪くな...
師匠▶▶ BIO屋の苦しみ ④
- 2016/10/16
- 19:42
「価格には理由がある」の言葉、まさにその通り。本当の農業に真剣に取り組んでいる人たちの仕事を、消費者にはぜひ正当に評価してもらいたいものだ。小生の友達にスモモの自然栽培を続けている人がいる。無農薬無肥料だから、大変な手間暇が掛かる。先日も忙しそうにしているので、「とっくに収穫をすませたのに、なぜ?」と聞くと、毎日毎日、一匹一匹、木についた毛虫を手で取っているのだという。「消毒」と称して殺虫剤を撒け...
師匠▶ ハーブとスパイス ②
- 2016/12/12
- 20:46
植物が苦味、辛味といった刺激成分を蓄えるのは、虫や鳥による食害から身を守るためらしい。虫や鳥にとって毒になる成分が人間には喜ばれる。これは植物にとっては誤算だったろうね。畑の上の水路と田んぼの跡地がいま、青々としたクレソンで覆われている。何年か前に近所の女性がまいた種から大繁殖したんだ。辛味に抗菌性の成分が含まれているとか。タダでバケツ一杯採って生でバリバリ食い、東京では近所に配ると喜ばれる。都会...
師匠▶ がんばらないライフ ③
- 2017/06/11
- 21:10
農作業をしていると、「よく稼ぐね」と声を掛けられることがある。「よく働くね」の意味の土地言葉だが、「稼ぐ」の語感には「頑張る」と似た冷やかしが込められているような気がして、腹の中で苦笑するしかない。 今回も東京から来て1週間のうちに代掻き、土均し、田植えと、泥人形になりながら作業に没頭した。周りはどこもすべて乗用のトラクターと田植え機でこなしているのに、我が田では手押しの田植え機と人力だけだから、...
兎▶▶ 食品リサイクル ③
- 2017/08/01
- 01:43
シドニーの無料スーパーの件、わたしも読みました。パリでは低所得者層向けに格安で販売するスーパーがありますが、無料というのはすごいですね。それ以上に驚いたのは山梨のフードバンク。スーパーの形態まで「進化」こそしていないものの、必要としている人のところへ届ける活動は素晴らしいです。思い起こせば今から12、3年前のこと。農家の方々に、規格外の野菜や果物を有償で提供していただこうと試みていた時期があります。...
師匠▶▶ 食品リサイクル ④
- 2017/08/05
- 00:58
兎さ吉のアイデアに対して農家が怒った理由は、小生にはよく分からない。「好きで規格外れを作ってるんじゃないやい!」とでもいうのだろうか。でも、人間が勝手に考え出した規格に自然が合わせてくれるわけはないので、企画外れは必ず生じる。近所の畑に時々ナスやキュウリが何本も無造作に捨てられていることがある。出来が悪かった上に自家消費し切れなかったのだろうか。切り落とした大根の葉が大量に捨てられていることもよく...
師匠▶▶▶ 食品リサイクル ⑥
- 2017/08/18
- 22:02
先日、友達2人が応援に来てくれて田んぼの草取りをした。泥田の隅から隅まで文字通り這いずり回ってじゅうたん状に繁茂した水草を手で抜くという、体力と根気の作業だ。除草剤を投げ込んでおけば昼寝していられるんだけど、無農薬栽培で昔の百姓の苦労を味わっているわけだ。兎さ吉の言う「お米のひと粒には7人の神さまがいる」という言葉は初めて聞いたが、体で理解できる。中国にも同じような意味の古詩がある。百姓の苦労を描...
師匠▶ おひとりさま問題 ②
- 2018/06/12
- 18:08
「おひとりさま問題」を我が身に照らして考えると、家族状況から兎さ吉の言う「真正おひとりさま」にはなりそうもない。ただ「疑似おひとりさま」にはなり得る。そしてそれは私にとってかなり深刻な事態になりそうだ。というのは、山梨での半農生活は家人が一緒にいることを前提に成り立っているからだ。そのことは、山梨に土も太陽も水もあって当たり前と思うのと同じように、当たり前のこととしてきたため、余り意識してはいなか...
榎戸師匠▶▶▶▶ どうぶつとわたし ⑧
- 2019/03/26
- 07:22
元大学教員らしく、問題点を簡潔にまとめたね。このうち、山梨の中山間地で細々と百姓している私の目にも見えるのが「里山の放置」「外来種」「環境汚染」。とりわけ深刻に思うのが「環境汚染」に含まれるであろう地球温暖化だ。限界集落の片隅の小さな畑にも歴然と現れている。
ネギの異変に気付いたのは7、8年前の冬だった。黒い粟粒のようなアブラムシが初めて出現した。風に乗ってたどり着くと、たちまち大増殖して汁を吸い...
師匠▶▶ ホームセンターなるもの ④
- 2019/06/19
- 23:50
恐らく田舎だけの特徴だと思うけど、我が町のホームセンターのアメーバは農業関係の方面で増殖が目立つ。品ぞろえが豊富で、耕運機や田植え機のようなものはさすがに置いてないが、日常の作業で使うものは大抵手に入る。
先日、田の代掻き中に耕運機のギヤオイルが空になっているのに気付いた。すぐに補充して作業を続けなければ田植えの日程に影響してしまう。慌てて自動車で街に出たが、ちょうど日曜で行きつけの整備工場もガソ...